ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~

 言いながら、頬が熱くなるのがわかった。

 絡み合う彼の視線が一瞬にして甘さを帯び、運転席から身を乗り出してくる。

 キスされる……!?

 マスクはしているものの、思わずギュッと目を閉じる。

 しかし、唇にはなにも触れる気配がなく、油断していたところで耳に温かい息がかかった。

「じゃあ、遠慮なくきみを部屋に連れ込むことにする」

 意味深に囁かれ、途端に慌ててしまう。

「つ、連れ込むって……変なことをするつもりなら帰ります!」
「冗談だ。さっさと下りて部屋へ行こう。コーヒー淹れてやるから」

 またからかわれた……?

 私を振り回す彼の言動には相変わらず腹が立つのに、促されるまま車を下りると、彼に差し出された手を自然と握っていた。


 瀬戸山の部屋は、地上からはるかに遠い二十七階にあった。扉やフローリングには温かみのある無垢材が使われており、白い壁が明るい印象だ。

 通されたリビングダイニングにもナチュラル系の木製家具が多く、男の人にしてはホッとする部屋に住んでいるなと思う。

 ダイニングテーブルにはシンプルなガラスの花瓶が置かれ、白いトルコキキョウとブルースターの花が生けてあった。

 どちらも派手ではない花だけれど、部屋の印象を明るくしている。

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