唯都くんは『運命の番』を溺愛したい

 なんのこと?と戸惑う理亜ちゃんに背を向け、私は祭壇まで走る。

 長椅子の後ろに隠れていてと伝えられない代わりに、上体が縛られたまま首だけを左に振った。


 ――早く、お願いだから。


 しぶしぶ体を丸めた理亜ちゃんにホッとして、ピアノの前にすすむ。



 背中に固定された手を使い、なんとかふたを開けることに成功した。

 手の平でなんとか鍵盤を押す。

 あまり力が入らない。



 ひ弱な音しか奏でられないなんて、こんなんじゃダメだ。

 チャペルの外まで聞こえるように、爆音を鳴らさなきゃ。



 近くに民家があるかわからないが、誰かが「何の音?」と様子を見に来るぐらいの音量が欲しいけれど……

 そこまで響かせるのは無理そう。

 せめて男が焦って、ピアノを触る私を止めに来るぐらい大きな音を。





 お腹ごと縛られた右腕を、鍵盤に思い切り打ちつける。

 体を傾けながら。

 何度も何度も。

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