唯都くんは『運命の番』を溺愛したい
男が運転席に乗り込んだ。
チャリンと金属音のあと、出発準備完了を知らせるエンジン音に車が小刻みに揺らぎだす。
男はハンドルを握ると、死人のような脱力声をこぼした。
「あーあ。オマエと一緒に、天上唯都も売り飛ばす予定だったのにな」
唯都様を助けられた達成感が私にはある。
でも金メダルのように誇らしげに輝くそのハートの裏側は、見事なまでに真っ黒だ。
恐ろしすぎる未知の未来から逃げたい。
絶望感が張りついて拭いきれない。
「オマエの姉も売れば何百万とかに化けたのに。気の強い女のアルファを服従させて泣かせたい奴らって、案外いるからな」
独り言なのか、私と会話をしたいのか。
生気がなく淡々としゃべる男。
怒り狂っている時よりも怖く感じるのは、とんでもないことをしでかしそうだから。