唯都くんは『運命の番』を溺愛したい


 男が急ブレーキをかけたせい、私の体が一瞬宙を浮く。

 そのまま足を置く細いスペースに、背中からドサり。



 狭くて余計に薄暗い場所だ。

 身動きなんて絶望的。

 完全に体が挟まってしまった。

 縄で縛られていなければ、シートに戻れるのにな……

 

 高熱が出た時のよう。

 思考が回らず頭がぼーっとし始めたころに、車のドアが開く音が聞こえた。

 バタンと閉まる音。
 
 今度は別のドアが開く音が、車内に不気味さを漂わせる。

 音の出どころはすぐ近く。

 私の頭の真後ろにある、左の後部ドア。



 薄暗い車内。

 私の顔の真上を、何かが覆いだす。


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