唯都くんは『運命の番』を溺愛したい
上半身を私から放した男の目には、怒りの炎が燃えさかっていた。
「くそっ」と眉を吊り上げ、怒りをぶつけるように何度も助手席のシートを殴っている。
突然、怒りだした理由がわからない。
怖い。
逃げたい。
今度は私が殴られそう。
でも逃げることなんてできない。
男は歯をガチガチならしながら、私のポニーテールを引っ張った。
頭皮に走る激痛に顔をゆがめる私を、真上から怒鳴りつけてくる。
「なぜだ! なぜもう甘い匂いがしなくなった?」
え? なんのこと?
「俺が可愛がってやってるのに! なぜだ! なぜフェロモンが消えた?」
首を傾げ、私は言葉の意味を理解する。
言われてみればだ。
いつの間にか私の体から、熱っぽさが消えている。
恐怖で体は震えているけれど、過呼吸のような肺の荒ぶりは静まった。
さっきまでは自分がこの男の前で発情しないか心配なほど、ハァハァ言っていたのに。