唯都くんは『運命の番』を溺愛したい


 「オマエは飼育型オメガなんだ。アルファの俺が可愛がれば発情する。大量のオメガフェロモンをぶっ放して、俺に快楽を与えるはずだろ? それなのになぜだ、なぜ甘い匂いが消えた! なぜ呼吸が戻ってる? 答えろ、今すぐに!」


 私に恐怖を与えたいんだろう。

 今日一番の強さで、車のシートに拳を突き刺した男。



 「バカにしやがって!」



 私の頭側のドアから顔を突っ込んでいた彼が、サッと姿を消す。



 安心したかった。

 このまま男が消える未来を、必死に祈った。

 でもそんな奇跡が起こるはずがない。

 私の瞳がキョドってしまったのは、足側のドアが乱暴に開いたせい。



 足元から私の頭の方にのぼってくる、不気味な黒い影。

 男の顔で間違いない。



 車のシートに寝そべるように、私の真上に覆いかぶさった。

 怒りと共存するいやらしい眼光が、真上から容赦なく私に突き刺さる。


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