唯都くんは『運命の番』を溺愛したい
男が小太りなおかげで、私が挟まっている足置きスペースに男は体をねじ込むことはできない。
だから彼の胸が私に押し当てられてはいない。
空間ができていることだけが唯一の救い……
だけど……
安堵のため息をつくにはまだ早い。
襲われる直前というピンチに変わりはない。
「オメガフェロモンを出せ! 今すぐ俺を誘惑しろ!」
いらだちで吠えた男の拳が、彼の頭上に。
――殴られる。
恐怖で顔をそむけた時だった。
男よりもさらに上から、金属が凹むような音が響いたのは。
「なんだ、何の音だ!」
男が叫んでも音が鳴りやまない。
ドンドンと響くたび、重い車体が左右に揺れている。