唯都くんは『運命の番』を溺愛したい

 「おいっ、待てっ、何をする!」



 シートに寝ころぶ男の足首が捕まった。



「引っ張るな、よせ!」



 男はズズズと足元の方に引きずられていく。



 「足をはなせって言ってるだろう―が! オマエもオークションに売り飛ばすぞ、コラ!」



 ヤクザのよう。

 ドスのきいた声を張り上げた男だったが、重たそうな体をばたつかせても無意味で。


 ――ズルズルズル。

 車の外に引きずりだされたかと思うと、いきなり私の視界から男が完全に消えてしまったのだ。



 え? 

 一体、どこに消えたの?



 うつ伏せ状態で、クルマの足置き場に挟まっている私。

 顔を起こすことが精いっぱい。



 震える瞳で車外の闇に視線を送る。

 私の視界に、夜空から落ちてくる小太りの男が映りこんだ。


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