ほんの少し思い浮かべただけの未来

 私たちはお互いの手すら触れたことはない。

 けれど、会社の同期として、リョウタとは同じ釜の飯を食べてきた。

 ひとつ屋根の下で暮らす夫婦として、同じ炊飯器のごはんを食べることもできる。

 そこまで考えたとき、ふっと疑問が浮かんだ。

 ならほかの同期とだったら?

 それは無理! と即答する自分がいた。

 ああ、そうだったんだ。私もリョウタのことが好きだったんだな。

 リョウタと結婚できたら、しあわせになれる。

 だけど……

 だけど、そうしたら会社は?

 私の専門分野は、全社的に人材が足りていない。

 だからギリギリ回せているだけで余裕はないにも拘らず、新人を採って、第一線でバリバリ活躍できる園田先輩を出すことになったのだ。本来であれば、異動先との人材トレードであるべきなのに。

 私が辞めたらどうなるか……

 それが想像できる程度には社内事情に通じて、自分に求められている役割が何なのかも見えている。

 そうなるまで育ててもらったから。
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