ほんの少し思い浮かべただけの未来
それに、私にとってもようやくひとり立ちでき、これからというときなのだ。
「簡単に『仕事辞めろ』とか言わないでよ」
「簡単に言ったつもりはないよ。めちゃくちゃ勇気いった」
「私ここまでがんばってきたの」
「知ってる。同期の中で誰よりもがんばってた。だけど……って、おーい、泣くなよ」
私は泣き上戸ではあるものの、まだ1杯目だし、人生が変わるかもしれない局面で酔うことなんてできない。
けれどリョウタの口ぶりからは、いつものやつだと思ってくれていることが窺える。
そのほうがいい。そう勘違いしてて。
リョウタに慰めてもらうわけにはいかないのだから。
ペーパーナプキンでこぼれ落ちてくる涙を押さえた。ゴワゴワしていて目には固かった。
「私は福岡には行けない」
リョウタまで目を赤くして、それから弱々しく微笑んだ。
「断られるってわかってた。それでも言いたかったんだ。悪かったよ」
「ごめんね。本当にごめんね」
「いいって」