ほんの少し思い浮かべただけの未来

 にも拘らず、この4月に新人が入ってきた。

 ということは、新人がある程度育った時点で誰かが出るのは必至だ。

 そして順当にいけば、それが園田先輩であることも予想がついていた。

 会社の方針で、若いうちに1度は異動して経験を積むことになっている。

 その先は、数年で元の部署に戻ってくる人もいれば、それきり移動先で定着する人、また別の場所へ移動する人、と様々。

 にも拘らず、先輩はまだ異動したことがなかった。入社以来、今のグループひと筋。すでに若手でもなく中間管理職になっていて、遅すぎたくらいだ。

 そして、そのことを誰よりも気づいていたのが先輩本人だった。

 だから、先輩は今年度に入ってからというもの、事あるごとに『海藤もすっかり1人前だな』と言って私を認めてくれた。

 実際には、まだまだ先輩には遠く及ばないのに。

 ああ、それにしてもまさか先輩がこんなに早くいなくなってしまうとは思わなかった。もう半年は先だろうと油断していた。

 しかし先輩のほうはというと、部長に呼ばれたときにはすっきりとした顔をしていた。

 グループの誰とも目を合わすことなく、部長のあとに続いて軽やかに会議室の中へ消えてしまった。

 ドアが閉まると同時に、私は動揺する指先と半分働かない頭でも、どうにかキーボードを叩いた。そうしてグループ長へメールを送った。

 『私に送別会の幹事をやらせてください。海藤』と。
 
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