ほんの少し思い浮かべただけの未来

 ホタルイカの目玉が残っていたらしい。固いものを思いっきりガリッと噛んでしまって痛い。

 そんなの、淋しいに決まってる。

 園田先輩がいなくなることも、リョウタがいなくなることも……

 けれど、会社員なんだ。異動で仲間がいなくなることを、いちいち『淋しい』と嘆いてなんていられない。

「まあ、異動したところで同じ会社にいるんだから、これからだってけっこうな頻度で会うことあるんだろうし。福岡に出張するときには、リョウタの席まで挨拶に行くね。リョウタも名古屋に来ることあったら、顔を見せてよ」

 ホタルイカの目玉を噛んだときの嫌な感触は、ペラペラ喋っている最中も口の中に居座り続けていた。

「そんなんじゃなくて……」

「そんなんじゃなくて?」

 私はリョウタの瞳を覗き込んだ。

「ミヤコも一緒に来ない?」

 真っ直ぐに見つめ返された。
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