ほんの少し思い浮かべただけの未来
店内で、この6番テーブルだけ気まずさが漂っている。
私はことさらに明るく言った。
「わー、おいしそうだよ。食べよ、食べよ!」
「両方きたから、このまま話をさせて。ミヤコは食べながら聞いててよ」
「いいけど。あっ、レモン搾るね」
リョウタが唐揚げにレモンをかける派なのは、もちろん知っている。
けれど、もしかしたら今日は口内炎ができていてレモンはほしくない、なんてこともあるかもしれないから、念のため声をかけた。
「そんなんじゃなくて、俺が言いたいのは、」
私は櫛形レモンを持つ指先に力をこめた。
「会社辞めて一緒に来ない? ってこと」
「はあ?」
搾ったレモンから種が飛び出した。
私はテーブルの上を追いかけた。
「結婚しない?」
「えっ、えっ?」
驚きながらも手は動く。素早くキャッチした種をペーパーナプキンの上に置いた。
「好きだったんだ、入社してすぐの頃からずっと」