玉響の花雫    壱
今年の面接時は、企業説明会や
出張が重なって、人事として地方に
行く事が多かったから携われなかった


仕事を片付ける前に、デスクに置かれた
履歴書を手に取り1人ひとり目を通して
行くと、最後の一枚に目を奪われた


‥‥‥‥ただの偶然か?


井崎‥‥霞‥‥


フッ‥‥この狭い世の中で、こんな
偶然があると、流石に意識せずには
居られない‥‥


『あら?筒井君がそんな顔するなんて
 珍しいわね?』


『すみません‥自分が入社した
 時のことを思い出してました。』


どんな顔してたのか分からないが、
オフの緩みでも出ていたのか?


終業後、時間的にも喫茶店に着くのが
ギリギリかと思ったが、何故か彼女の
顔が見たくて急ぐと、土砂降りの雨に
見舞われ走って店まで向かった。


「いらっしゃいませ。」


‥‥‥ああ‥やっぱりもうごまかせない


俺はこの子が‥‥きっと特別な
人になる‥‥‥‥そう思えた。


せっかく想いを伝えてくれたのに、
逃げてしまった彼女だけど、4月に
入社してきたらもうきっと離せない‥


久しぶりに誰かに惹かれたこの思いを
信じてみたいと思えた。
次は俺が伝えていかないとな‥‥


side story END
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