俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う


 芙実に付き添って貰って、父親にも検査の結果を報告した。

 結婚して6年で最愛の妻を事故で亡くした父。
 再び最愛の人(娘)を失うんじゃないかと尋常じゃないほどに動揺する。

「パパりん、落ち着いて。……泣きたいのは羽禾だからっ」
「っっ……そうだよなっ。お父さんが泣いたところでどうにもならないよな」

 地獄絵図だ。
 羽禾はもちろんのこと芙実も父親も号泣で、手を握り合っているのにバラバラになってしまいそうで怖い。

「大丈夫だよ、大丈夫。末梢神経は再生する力を持っているんだよ。生物学者のお父さんが言うんだから、心配しなくていいっ」

 暫く取り乱していた父親が、羽禾を安心させるために脳のメカニズムを丁寧に説明し始めた。

 医師から説明されたものとほぼ同じ。

 脳梗塞や脳挫傷の場合は中枢神経が損傷する。
 その場合は、神経は再生されない。

 だが、脳を圧迫したり、視神経を圧迫している髄膜腫の場合、腫瘍部分を取り除くだけで脳自体が損傷しているわけではないから、神経が損傷するとしても末梢神経だという。
 その場合、末梢神経は時間と共に再生するという。

「いつ手術するつもりなんだ?……1日も早く手術した方がいい」
「……うん、分かってる」

 腫瘍が大きくなればなるほど、後遺症が残る確率が高くなる。
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