俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う
*

 イギリスに帰国した瑛弦は、羽禾が住んでいるアパートを訪ねた。

「司波くん…」
「羽禾は?電話が繋がらないんだけど」
「……羽禾ちゃんは日本に帰国したの」
「いつ戻ってくんの?」
「……もう戻って来ないわ」
「どういう意味?」
「局を退職したの」
「……え?」
「一身上の都合で仕事を辞めて、日本に帰ったのよ」
「………」

 アパートにいた令子を問い詰める瑛弦。
 何も聞かされていない瑛弦は、令子の言っていることが何一つ理解できない。

「一身上の都合って?」
「詳しくは分からないの。何度聞いても教えて貰えなくて」
「じゃあ、辞めるって分かった時点で、何で俺に教えてくれなかったんだよ」
「……羽禾ちゃんに口止めされてたから」
「何だよっ、それ…」

 別れたい素振りも、退職することも、何一つ聞かされていなかった。
 何度思い返しても、それらしい素振りなんて一度も見せたことがなかったのに。

「西野さんの連絡先教えて」
「え」
「いいから今すぐ教えろ」

 瑛弦がレース以外でここまでキレたことがない。
『本気にならない男』が、マジギレしている。

*

「はい、西野です」
「司波ですけど」
「………あぁ、こんにちは」
「俺から電話が来るのが分かってたみたいなリアクションだな」
「……どういう意味かな?」
「あいつの上司なんだから、退職理由知ってんだろ?」
「電話では話せないな」
「今どこにいるんだよ」
「フランスにいるけど、もしかして来るつもり?」
「ホテルの地図送れ。今日中にそっち行くから首洗って待ってろ」
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