俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う


 12月上旬にボクシングのタイトルマッチがフランスで行われることになっていて、その実況をするために西野は現地入りしていた。
 
 そこに現れた瑛弦。
 突然目の前から恋人が消え、パニックを起こしていることは百も承知。

 羽禾からレース後の彼のことを頼まれていて、殴られる覚悟で瑛弦を迎えた。

「単刀直入に尋ねる。羽禾は何で辞めたの?」
「……一身上の「言い訳はいいから。理由を教えろよ」

 瑛弦の目があまりにも鋭くて、視殺されかねない、そんな威圧感を感じた。

「笹森は病気が原因で退職した」
「……頭痛とか眩暈の?」
「そうだ。だいぶ前から不調だったのは司波くんも知ってるだろ」

 薬を飲んでるところを何度か目にしている瑛弦は、西野が嘘を言っているようには見えなかった。

「病気が原因だとしても、俺の前から消える理由にはならないだろ。納得しようにも状況が分からないんじゃ納得のしようがない」
「……はぁ、本当に困ったな」

 ホテルのラウンジで大暴れされても困るから、部屋に受け入れはしたが……。
 すんなりと聞き入れて貰えそうにない雰囲気に、さすがの西野もお手上げ状態。

「とりあえず、座って話そうか」

 大の男が立ったままでは地獄絵図。
 今にも殴り掛かって来そうで、西野は瑛弦をソファに座らせた。

「実は……――」
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