俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う
詳しい病名は伏せた状態で、退職せざるを得なかったことを伝えた。
治療に専念するために帰国したことも話した上で、瑛弦が納得できるラインを探る。
「大企業なのに、休職扱いにもなんねーの?」
「っ……、本人の希望だからそこは何とも…」
鋭いつっこみに西野は冷や汗が出る。
「じゃあ、実家の連絡先教えて」
「へ?」
「あいつのスマホ繋がんねーから、直に電話してみる」
「っ……。悪い、俺もスマホの番号しか知らなくて」
「会社なら分かるだろ。アパート引き払って実家に住んでるって言ってたし」
「……個人情報はさすがに…」
「何だよっ。それくらいいいじゃん」
一向に引き下がろうとしない瑛弦。
『本気にならない男』だなんて、誰が言ったんだ。
猪突猛進型じゃないか。
「あーいいや」
「え?」
「調べる伝手は幾らでもあるから」
「……」
目が笑ってない。
振られたことが受け入れられないのか。
日本に殴り込みに行きそうな気配だ。
「オフシーズンだからと、羽目を外すなよ?」
「あ?」
「将来有望なドライバーくんに、人生の先輩としての助言だよ」
「大きなお世話だっつーの」
瑛弦はソファから立ち上がり、ドアへと向かう。
「西野さん、そのネクタイ、老けて見えるよ」
フランスまで出向かせた謝礼を置き土産にした。