俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う


「今、何て言った?」
「だから、暫く日本に行って来るって言ったんだよ」
「何しに?」
「あ?……何でいちいち報告しないとなんねーの?オフなんだから、俺が何しようが勝手だろ」
「それはそうなんだけど、居場所くらい知っとかないと」

 加賀谷家に顔を出した瑛弦。
 理由を口にしないけれど、明らかに彼女に会いに行くのだと分かる。

 とはいえ、病気のことを一切知らせないと言っていただけに、瑛弦がどこに何をしに行くのが気になって仕方ない。

「いつの便で?」
「今夜の便だけど」

 血は繋がっていないが、育ての親というのもあって、家を空ける時は報告しに来る瑛弦。
 律儀な性格というよりは、それが加賀谷家のルールでもあるからだ。

 両親が買い物に出ていることもあって、家には瑛弦と2人きり。
 瑛弦は加賀谷家で飼っているゴールデンリトリバーのジョイ(オス)とリビングで戯れている。

 瑛弦がどこまで知っているのか。
 令子を問い詰め、フランスにいる西野の元にも行ったことを把握している基は、物凄い速さであらゆる事態を想定する。

 彼女にとって今は時間が必要なのは分かるが、瑛弦にとったら1秒も放置できない状態。

 一度は恋心が芽生えた女性。
だから、彼女の願いを叶えてあげたいところだけれど。
それよりも、20年以上共に過ごした瑛弦の気持ちを大事にしたい。

 瑛弦にとって、誰よりも信頼できる兄でいたいから。

「羽禾ちゃんは脳腫瘍の治療に専念するために、お前の元を去ったんだよ」
「………は?」
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