俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う

 ファステスト・ラップとは、決勝レースにおいて全ドライバーの中で最速のタイムのこと。

 通常、新品タイヤを履き替えた直後に出やすい。
 予選3回目でポールポジションを争うために、新品のハードタイヤで戦うのはその為だ。

 レース終盤に差し掛かり、どのマシンもタイヤはダレ(消耗)てタイムは落ちてくる中、瑛弦は実況席も発狂させるほどのタイムを叩きだした。

「あーもしかして、さっきのSCが出た時に、中古のハードタイヤに交換したのでは?」
「そうかもしれませんね!」

 予選で使用したタイヤは通常返還するタイヤに割り当てることが多い。
 けれど、路面の状態や天候によってタイヤの種類を選択しなければならないから、一度きりの使用済のハードタイヤを返還せずに未使用のソフトタイヤを返還することもある。
 どのタイヤを残すのか、どのタイミングで履き替えるか、F1の奥深さでもある。



 ただ単にポイントを稼いでチャンピオンになったのでは意味がない。
 頂点に立つには、それにふさわしいタイムを叩き出して優勝したいと瑛弦は考えていた。

「Checkered flag.」(ラスト1周だ)

 チェッカーフラッグが振られた。
 最終ラップを意味している。


 スタンディングオベーション状態の観覧席。
 実況ブースにいる2人も立ち上がり、ガラス越しに既にガッツポーズを出す準備万端。
 各国の旗が振られる中、瑛弦は堂々の1位で走り切った。

「WOO-HOOOOOH!THAT FEELS GOOOOOOD!」(やったぜぇ~~~っ!)
「Congratulations!Thanks Eito…」(おめでとう!よくここまで…)

 基は感極まって声が震えた。

「ARIGATO~Thank you so much for all the hard work guys
and for continuing to believe in me.」(本当にありがとう、ピットクルーみんなのおかげだ。俺を信じ続けてくれてありがとう)
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