俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う
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 イギリス南西部にあるコンウォール。
 2年前に羽禾と2泊3日を過ごした想い出の地だ。

 羽禾の父親に教わったのは、この想い出の地に彼女がいるということ。

 日記やアルバム、レコーダーなどを使って、彼女なりに記憶を留めておく努力はしてくれていたらしい。
 
 生きていてくれるだけで有難い。
 全てを忘れていたとしても、俺の中に彼女との記憶はちゃんと刻まれているから。

 体裁など構ってる余裕すらなく、ベース基地からレーシングスーツのままやって来た琰弦は、逸る気持ちで彼女と歩いたビーチに向かう。

 11月下旬のコンウォールは冷たい海風を纏い、肌がピリッと痛みを帯びる。
 海岸線に車を止め、2年前に彼女と歩いたビーチに降り立つと……。
 
「あっ…」

 砂利のビーチの上に少し大きな石があり、その石の上に懐かしいものを見つけた。



 胸に込み上げてくる何とも言えない感情。
 安堵なのか、恋しさなのか、嬉しさなのか、分からない。
 
 積石の意味やこの地でのことを憶えているのだろうか?

 彼女の父親から、『記憶を辿るように、日記やアルバムに記されていることを日々確認している』と聞いた。
 憶えていないこともあるらしいが、確認しているうちに思い出すこともあるという。

 辺りを見回したが、彼女の姿はなかった。
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