人魚の鼓動はあなたに捧ぐ
「あ、あはは……」
きっと服のことを指摘したところで、おじいさんと似たような反応が返ってくる。
ほぼ直感のようにそう思って、わたしは曖昧に笑うことしかできなかった。
「今晩は、祭りがあってね。よければあなたも見に来るといいよ」
「お祭り、ですか?」
「そうそう。まがはみ様に感謝を伝えて、島の平和を願うんだ」
──まがはみ様。
聞き慣れない響きだけれど、きっとこの島の守り神のような存在なのだろう。
女の人は「それじゃあ」と手を振って行ってしまった。
まがはみ様のことは気になるけれど、それよりも、さっきの少年の方が気になる。
どうしてあの子が生きているのだろう。
昨日の夜に浜辺で見たときは、確かに死んでいたはずだ。
……男の子に聞けば、なにかわかるかもしれない。
昨晩、わたしの身に何が起こったのかを知ることができるかもしれない。
……きっとわたしもあのとき、死んだと思う。
そうでなければ、あの痛みと意識を手放す感覚が夢だったということになる。
けれど、夢だなんて思えない。
ただの夢だと片付けるには、あの感覚はあまりに生々しく、思い出そうとすれば足がすくむほどだった。
現実だとするなら、一体どういうことなのか確かめたい。
どうして死んだはずのわたしは、まだこうして生きていられるのだろう。
──わからないことばかりだ。
わかるのは、わたしは多分、姉を探してこの島を目指していたということだけ。
あとはぜんぶ、失ってしまった。
その上、不思議なことが起きて、不思議な出会いもあって。
わたしは、知りたいと思った。
わたしのことも、わからない、すべてのことも。