身代わりから始まる恋  〜白い悪魔の正体は甘くて優しい白馬の王子!?〜
「おつきあいは継続でいいかな?」
 香蓮はどきっとして目を伏せた。

「ダメかな。幻滅されても仕方ないよね。仕事を放ってまで来ることはできない、なんて言ったから」
「そんなことない! むしろもっと好きになった!」

 言ってから、両手で口を押える。
 澄玲は香蓮の剣幕に驚いたあと、顔中に笑みを浮かべた。

「ありがとう。すごくうれしい」
 香蓮はもじもじして、夜景に目をやった。
 が、心がすっかり浮ついて、夜景より澄玲が気になって仕方がない。
 香蓮の隣に立ち、澄玲は夜景を眺める。

「あれから考えたんだけどさ」
 澄玲は言葉を切った。香蓮は黙って続きを待つが、なかなか話し始めない。
 山の涼しい夜気が二人を包み、そよりと風が通り過ぎた。

「どんなことを考えたの?」
 待ちきれず、香蓮は聞いた。
 澄玲は夜景をにらみつけてから、香蓮に向き直る。
 険しい顔に、香蓮は思わず一歩を引いてしまった。
 急に怒っているようで、戸惑った。

 どれだけ厳しいことを言われるのか。別れのメッセージのことだろうか。だが、彼は香蓮が送ったものではないと見破っていたし、前回は怒った様子もなかった。
 不安にどきどきする彼女を見据え、澄玲は言う。

「香蓮。結婚してほしい」
 聞こえた言葉に、香蓮は目をしばたいた。想像の範囲を超えていて、思考が追いつかない。

「一緒に住んでいれば、あんなすれ違いは発生しなかったはずだ。それに、結婚したら近くでもっと守れると思う。俺は……本心では、やっぱり一番に君を守りたい」
 香蓮は背の高い彼を見上げた。
< 56 / 57 >

この作品をシェア

pagetop