シャンパンをかけられたら、御曹司の溺愛がはじまりました
決意
「颯斗さん、家にいるかしら?」
翌朝、身支度をして朝食を食べた一花はつぶやいた。
腹をくくったからか、昨夜はひさびさ熟睡できて、爽快な気分だ。
でも、ともすれば颯斗に会うのを躊躇する気持ちに傾いてしまうので、おじけづかないうちに会いにいきたかった。
(どちらにしても颯斗さんが結婚するのは変わらないんだもの。はっきり本人の口から聞いたほうがいいわ)
つらくても、そのほうがあきらめられるはずだと一花は自分を奮い立たせた。
さらにもう一押しと思い、花を管理している居間に向かう。
置いてある花の中から一本一本選んでいき、小さな花束を作った。
マリーゴールド、トルコキキョウ、ワレモコウ……。
それらは『勇気』『よい語らい』『変化』などの花言葉を持つ。
オレンジ、黄色、赤の元気になれそうなものが仕上がった。
一花はそれを手土産に持っていくことにした。
花に勇気をもらって、気合いを入れ直す。
「よし、行こう!」
彼女が張り切って玄関のドアを開けると――目の前に人がいた。
一花は驚いて目を見開いた。
それは今から会いに行こうとしていた、まさにその人だった。
目の下のクマがひどくて、憔悴した彼はそれでもアンニュイな魅力を醸し出している。
「颯斗さん……」
体調が悪いのだろうかと彼のことが心配になり、一花は颯斗をまじまじと見つめた。
「⼀花、ようやく会えた!」
ほっとした顔で、彼はしみじみつぶやく。
逃げないように彼女を捕まえようとしたのか、手を伸ばしてくるが、途中で止めてグッとこぶしを握った。
そして、その代わりに颯斗はすがるような目で一花を見てくる。
「待ち伏せなんて気持ち悪い真似をして、すまない。でも、どうしても一花と話がしたかったんだ……」
その切実な声に一花は胸を衝かれた。
彼からしたら、ある日突然一花と連絡が取れなくなり、拒否されたのだから怒っていてもいいはずだ。
しかし、そんな仕打ちをされたのにも関わらず、話しに来てくれた彼を、気持ち悪いと感じることなどなかった。
「すまない……」
一花のを沈黙を非難だと思ったようで、颯斗がまた謝ってきたので、彼女はかぶりを振り、その必要はないと言外に伝えた。
彼女のほうも話に行こうと思っていたくせに、いざ彼を目前にすると声が出ない。
開けたドアを押さえて、颯斗を中に誘導するように手で招いた。そして、なんとか声を絞り出す。
「……どうぞ」
「いいのか?」
頑なだった一花の態度がいきなり軟化したので、颯斗は戸惑っているようだった。
一花はまっすぐ彼を見てうなずいた。
「はい。一度ちゃんと話しましょう」
「ありがとう」
颯斗は安堵したように肩の力を抜き、彼女についてきた。
翌朝、身支度をして朝食を食べた一花はつぶやいた。
腹をくくったからか、昨夜はひさびさ熟睡できて、爽快な気分だ。
でも、ともすれば颯斗に会うのを躊躇する気持ちに傾いてしまうので、おじけづかないうちに会いにいきたかった。
(どちらにしても颯斗さんが結婚するのは変わらないんだもの。はっきり本人の口から聞いたほうがいいわ)
つらくても、そのほうがあきらめられるはずだと一花は自分を奮い立たせた。
さらにもう一押しと思い、花を管理している居間に向かう。
置いてある花の中から一本一本選んでいき、小さな花束を作った。
マリーゴールド、トルコキキョウ、ワレモコウ……。
それらは『勇気』『よい語らい』『変化』などの花言葉を持つ。
オレンジ、黄色、赤の元気になれそうなものが仕上がった。
一花はそれを手土産に持っていくことにした。
花に勇気をもらって、気合いを入れ直す。
「よし、行こう!」
彼女が張り切って玄関のドアを開けると――目の前に人がいた。
一花は驚いて目を見開いた。
それは今から会いに行こうとしていた、まさにその人だった。
目の下のクマがひどくて、憔悴した彼はそれでもアンニュイな魅力を醸し出している。
「颯斗さん……」
体調が悪いのだろうかと彼のことが心配になり、一花は颯斗をまじまじと見つめた。
「⼀花、ようやく会えた!」
ほっとした顔で、彼はしみじみつぶやく。
逃げないように彼女を捕まえようとしたのか、手を伸ばしてくるが、途中で止めてグッとこぶしを握った。
そして、その代わりに颯斗はすがるような目で一花を見てくる。
「待ち伏せなんて気持ち悪い真似をして、すまない。でも、どうしても一花と話がしたかったんだ……」
その切実な声に一花は胸を衝かれた。
彼からしたら、ある日突然一花と連絡が取れなくなり、拒否されたのだから怒っていてもいいはずだ。
しかし、そんな仕打ちをされたのにも関わらず、話しに来てくれた彼を、気持ち悪いと感じることなどなかった。
「すまない……」
一花のを沈黙を非難だと思ったようで、颯斗がまた謝ってきたので、彼女はかぶりを振り、その必要はないと言外に伝えた。
彼女のほうも話に行こうと思っていたくせに、いざ彼を目前にすると声が出ない。
開けたドアを押さえて、颯斗を中に誘導するように手で招いた。そして、なんとか声を絞り出す。
「……どうぞ」
「いいのか?」
頑なだった一花の態度がいきなり軟化したので、颯斗は戸惑っているようだった。
一花はまっすぐ彼を見てうなずいた。
「はい。一度ちゃんと話しましょう」
「ありがとう」
颯斗は安堵したように肩の力を抜き、彼女についてきた。