シャンパンをかけられたら、御曹司の溺愛がはじまりました

おまけのお話

「なぁ、好きでたまらない子に花束を贈りたいんだが、どういうのがいいと思う?」

 一花を後ろから抱きしめながら、颯斗が聞いてきた。
 彼女が台所でコーヒーを淹れているところだった。

「ひゃっ!」

 颯斗が彼女の肩に顎を乗せ、耳もとでささやくから、くすぐったくて一花は首をすくめる。
 そして、振り向いて、文句を言った。

「ちょっと、颯斗さん、危ないです!」
「悪かった」

 颯斗は謝るついでに、近づいた唇にチュッとキスを落とす。
 甘い視線に反省の色はない。でも、顔を赤らめた一花は「もうっ」と言うだけで許してしまう。

「それで、どう思う?」

 颯斗がふたたび尋ねてきた。
『好きでたまらない子』という表現にくすぐったさを感じながら一花は考える。自分のことだと素直に思えるのがうれしい。

「そうですねー、その子はきっとダリアが好きです」
「色は?」
「白なんて素敵かもしれません。白いダリアに白のラナンキュラスやニゲラを合わせて、スプラウトやファーンのグリーンでアクセントをつけたら、清楚でいいですね」
「それはいいな。清楚って言葉が似合う子なんだ」

 自分の好きな花で作った花束を思い浮かべてにっこりした一花に、颯斗は大真面目に同意した。

「そういう意味で言ったわけでは……」

 恥ずかしくなって、一花はまた頬を染めた。色づいたところにキスをして、颯斗は目を細める。

「かわいい子だからピンクの花も入れたいな」
「だったら、コーラルピンクのラナンキュラスを入れましょう」

 一花の頭の中の花束が清楚なものから可愛らしいものに変わった。

「甘すぎますね」
「じゃあ、どうする?」
「グリーンを増やしましょう」

 花の好きな一花は、想像でも、花束を作っていく過程が楽しかった。
 あれこれ考えて、颯斗と花束を完成させる。
 そして、次のデートで迎えに来た颯斗が持っていたのが、思い描いた通りの花束だった。

「Green Showerのものじゃなくて、すまないが」

 そう言いながら、花束を差し出した颯斗は花に負けずに華やかでさわやかで一花は見惚れてしまった。
 受け取った花束に視線を落とし、一花は答えた。

「いいえ、同じ花を使っていても本数や長さ、束ね方でぜんぜん違うものができるので、勉強になります」

 一花が甘すぎると言ったからか、茎を長めにとって、大人っぽく作ってある。とてもセンスのいい花束だ。
 彼女がしげしげ眺めていると、颯斗がふっと笑った。

「勉強になるか。それはよかった」
「あっ、今のなしです! やり直しさせてください!」

 自分の発言を反省して、焦った一花が彼を見上げる。

「颯斗さん、ありがとうございます。すごくうれしい!」

 微笑んだ一花を花束ごと、そっと抱き寄せて、颯斗は言った。

「可愛い彼女が喜んでくれて、俺もうれしいよ」

 ラナンキュラスと同じように彼女の頬が色づいた。
 甘い颯斗にどうにも慣れない一花だった。


 ―FIN―
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