心から願っています
心から願っています
【依織 Side】
駅が近づいてきて、私達は手を離した。
なんか少し微妙な空気が2人の間を流れている。
原因は私だ。私が変なことを言ったから。私は時々、1人で考え込むことがある。
そしてその頭の中のことを、安心できる人がいると、口に出してしまうのだ。
それをやってしまったから、こうなってしまった。
改札を通り、ホームへ向かう。次の電車までは少し時間がある。
私達は空いていたホームの椅子に座った。とにかくこの空気をどうにかしたいと思っていると、
「依織は俺のどこが好き?」
友秋先輩が聞いてきた。でも、さっきの空気感は変わらずだ。
「え、まぁ、」
顔が一気に熱くなった。
この空気で聞いてくるような質問ではないと思う。
「たくさんあるんですけど、まぁ、努力家なこととか、笑顔とか、走るフォームとか、優しいこととか、はい。」
精一杯頭を働かせ、とりあえず思いついたものから言った。
「笑顔と優しいか、、俺、クールで冷静なんじゃないの?」
「いや、冷淡かもしれないけど、笑ったらかわいいし、優しいときもたくさんあります。」
いつもクールだから、余計にそれが目立って、好きになる。
自分だけ言うのが恥ずかしくなって私も聞き返した。
「先輩は?」
すると、先輩は、ん? とわからないことを表すかのように言ってきたから、私は思い切って、
「先輩は私のどこが好きなんですか?」
と言った。いざ言ってみるとそこまで恥ずかしくない。というかさっきがすごく恥ずかしかった。
「俺かー」
と呟いてから、考えているのか黙り込んだ。
先輩の横顔を見てみると、耳がほんのり赤くなっている気がする。
「これ、聞くより言う方が恥ずいね」
「はい」
と言って、先輩は前を見て言った。
「程よく効率よく頑張ってるのがすごいなーって思って、あと、いつも笑顔なこととか、俺と話すときだけカタカタになったところとか?」
と先輩は1回話を止めて、私を見た。そして、2人して笑う。
中2のころ初めて先輩と2人で陸上以外のことを話したとき、私は緊張のあまり、カタカタという擬態語がピッタリ話し方になってしまったのだった。