剛腕SATな旦那様は身ごもり妻を猛愛で甘やかす~利害一致婚のはずですが~

(どうしよう)

 ウェイターから渡されたドリンクメニューを開いてはみたものの、良し悪しがわからず困ってしまう。

「飲まないなら、このノンアルコールカクテルにする? ピーチベースだって。真綾ちゃんも好きそう」

 メニューを眺めたまま固まっていると、鳴海がさりげなく助けてくれる。

「はい。それにします」

 ドリンクが決まると鳴海はウェイターに目配せを送り、注文を伝えた。
 緊張だらけの真綾とは対照的で、実に堂々とした立ち居振る舞いだ。

「おいしい!」

 コース料理が運ばれてくるたびに、真綾は感激のひと声を漏らした。
 とくにメインのヒレ肉は柔らかく、グレビーソースが絶品だ。
 前菜もスープも繊細な味付けで、料理人の宿命なのか料理方法を想像したくなる。

「気に入った?」
「はい」

 メイン料理だけでなくチーズも美味しかった。
 爽やかな甘みのあるドライフルーツのいちじくと一緒に口に運べば、チーズのコクがより際立つ。
 デザートを食べている途中で、ヴァイオリンの生演奏まで始まる。
 美しい調べはまるで、ふたりの門出を祝福しているようだった。
 ふと視線を鳴海に向ければ、ゆっくりと目が細められていき、極上の微笑みを返される。
 一滴も酒を飲んでいないのに、真綾は彼に酔わされていた。

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