剛腕SATな旦那様は身ごもり妻を猛愛で甘やかす~利害一致婚のはずですが~
◇
「昼食の弁当箱を返しに参りました」
「はーい」
夕食に使うピーマンを厨房で切っていた真綾は手を洗い、急いで配膳カウンターに向かう。
汗だくで立っている彼は発泡スチロールの保冷ボックスを縦に二つ重ねて抱え上げていた。
訓練などで訓練所の外に出る場合、事前に申請してもらえれば、機動隊食堂では弁当を提供することができる。
機動隊食堂名物の海苔弁は、ひそかな人気メニューだ。
「運んでいただいて、ありがとうございます。こちらに置いていただけますか?」
カウンターの上に置くよう指示すると隊員は発泡スチロールの保冷ボックスを配膳カウンターの上に下ろした。
いくら中身が空とはいえ、ひとりで運ぶのは大変だっただろう。
真綾はカゴからグラスをひとつ取り出し、給茶機でお茶を淹れてやった。
「よろしければどうぞ。お疲れでしょう?」
八月の終わりに近づいたが、照りつける日差しは容赦がない。
訓練から帰ってきたばかりなら、身体もまだ熱いだろう。
「お気遣いありがとうございます」
彼はグラスに入れたお茶を一気に飲み干した。実にいい飲みっぷりだ。
「失礼ですが、あなたは鳴海さんの奥様の……」
「あ、はい。妻です」
鳴海の名前が出て、真綾はなんのてらいもなくうなずいた。
これまで色んな人から同じ質問をされてきた。
鳴海との結婚がよほど意外だったのか、直接結婚の事実を確認してくる者が時々いるのだ。