剛腕SATな旦那様は身ごもり妻を猛愛で甘やかす~利害一致婚のはずですが~
「なにか変なことでも言いましたか?」
真壁は不思議そうに首を傾げた。
彼は鳴海と真綾の結婚にまつわる事情を一切知らない。
「いえ。なんでもないんです」
うまくできたかはわからないが、真綾はむりやり口角を上げ、真壁に微笑みかけた。
「自分もそろそろ失礼しますね。お茶、ごちそうさまでした」
真壁は再び律儀に頭を下げると、食堂から立ち去っていった。
(頭が追いつかない)
真壁がいなくなったあと、真綾はうわの空で手を動かし弁当箱を食洗機にかけていった。
グラスを洗いながら、ひとりぼうっと考える。
(隣室が空き? じゃあ、なぜ太陽さんは私と結婚を?)
鳴海は隣室の騒音に耐えきれないから寮を出たいと言っていた。
ところが、突きつけられた事実は彼の建前と真逆のものだった。
彼が嘘をついていないのならば、鳴海が噓をついていることになる。
(どうして?)
一度萌芽した疑惑の芽はいつまでも枯れず、猜疑心という名の水を得て真綾の心の中で育ち続けた。