剛腕SATな旦那様は身ごもり妻を猛愛で甘やかす~利害一致婚のはずですが~

 ◇

「空が真っ暗……」

 夕方になり仕事を終え帰宅した真綾は、空が真っ黒な雲に覆われ始めていることに気がつき、洗濯物を室内に取り込んだ。
 九月になっても暑さはさほど変わらず、鳴海の大きなTシャツも厚手のタオルもすっかり乾いている。

「ずるいよなあ」

 取り込んだ洗濯物を畳みながら、ボソリとつぶやく。
 鳴海の嘘が判明してから二週間。真綾は結局、彼に何も聞けずじまいだった。
 薄々、察してはいたのだ。
 二カ月以上一緒に暮らしておいて、鳴海は真綾と同居人以上の関係を築く素振りを一切見せない。
 互いの利害が一致しただけのお飾り夫婦。
 優しい言葉をかけてくれても、真に心を通わせることはないのだ。
 今となってはお飾りの夫婦関係すらも怪しい。
 真綾は左手の薬指に嵌めた結婚指輪をジッと見つめた。

(太陽さんは優しい人だから)

 嘘をついた理由はひとつしか考えられない。
 きっと困っている真綾を放っておけず、同情心から結婚を提案してくれたのだ。
 すべてを悟っても、なおこの関係を終わらせたくない。
 自分ひとりが口を噤んでいれば、鳴海のそばにずっといられる。
 小癪な計算機が導き出した結論は、沈黙を守ることだった。
 ――彼が好きだから。
 しかし、ほんの小さな出来心、浅はかな望みだとしても、神様は見逃してくれない。
 真綾に罰を与えるように、空から雷が落ちてくる。
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