剛腕SATな旦那様は身ごもり妻を猛愛で甘やかす~利害一致婚のはずですが~
「きゃっ!」
真綾は畳んでいる途中だったタオルを放り出し、耳を手で塞いだ。
再び空が点滅した数秒後、激しい雷鳴があたりにとどろく。
バケツをひっくり返したような、どしゃ降りの雨が一斉に降り始め、ベランダの窓を叩き始める。
まだ夕方なのに、夜更けと見まごうほど空が真っ黒に染まっている。
(リビングにいたらダメ)
リビングの窓は大きく、雷の音が聞こえすぎる。
真綾はおぼつかない足取りでリビング横の鳴海の寝室に飛び込んだ。ベッドの上に置いてあった毛布を頭から被り、自分の身体をきつく抱きしめる。
(早く! 早く終わって!)
雷が地に落ちるたびに、真綾の脳裏にある光景が鮮明に浮かび上がってくる。
『お母さん、しっかりして!』
そう、あの日もこんな風に激しく雷が鳴っていた。
『お願いっ! 目を開けて!』
何度呼びかけても、地面に横たわる母は答えない。
容赦なく打ちつけるどしゃ降りの雨は冷たく、真綾を身体の芯から凍えさせた。
あのときの冷たさが、蘇ってくる。
毛布をかぶっていても寒気は一向に収まらない。
真綾の身体はぶるぶる震えだした。
歯の根が噛み合わず、カチカチと音が鳴る。
凄惨な光景は目に焼きついていて、六年経った今でも忘れられない。
あの日から真綾の人生は百八十度変わった。