剛腕SATな旦那様は身ごもり妻を猛愛で甘やかす~利害一致婚のはずですが~
(何も考えたくない)
必死で目を瞑り、耳を塞いで、嵐が過ぎ去るひたすら祈る。
ところが、真綾の願いとは裏腹に嵐は収まるどころか激しさを増す一方だった。
(大丈夫。いつもひとりで耐えてきたじゃない)
そうやって自分自身を励まそうと試みたが、どうしたって効果は薄い。
『誰か!』
あのときのように助けを求めても、きっと誰も助けてくれない。
過去を思い出し苦痛に喘いでいると、真綾の前に救世主が現れる。
「真綾ちゃん?」
開いたままのドアの向こうには、鳴海が立っていた。
服がところどころ濡れている。きっと訓練所から帰る途中で雨に降られたのだろう。
「どうして俺の部屋に?」
「わ、たし……」
理由を取り繕うとしたその時、一際大きな雷が落ち、カタカタと身体が小刻みに震えだす。
「ご、ごめんなさい! すぐ出て行きます!」
部屋を出るべく鳴海の脇をすり抜けようとしたそのときだ。
「真綾」
彼は理由も聞かず憔悴しきった真綾の身体をただ抱きしめた。
「大丈夫だ。ゆっくり息をして」
まるで子どもに言い聞かせるみたいに、そっと耳もとでささやかれる。
「もう怖がらなくていい。俺がそばにいるから」
そう言われた瞬間、全身から力が抜けていくのがわかった。
ガクンとふらついた身体を鳴海が支えてくれる。
これ以上彼に迷惑をかけてはいけないと思いつつも、真綾は安心して身体を預けた。