剛腕SATな旦那様は身ごもり妻を猛愛で甘やかす~利害一致婚のはずですが~
(うれしい)
戸惑いの波が過ぎ、ようやくじわじわと実感が湧いてくる。
きっと鳴海も喜んでくれるはずだ。
(あ、でも! 結婚式はどうしよう。赤ちゃんがいるってなったら延期になるのかな? それとも中止?)
もはやどちらでも構わなかったが、儀礼服が見られないのだけは惜しい。
でも、そんなことばかりも言ってられない。数カ月後には子どもが生まれるのだ。
(今日はお祝いだから、うんとおいしいものを作ろう)
真綾は浮かれていた。突然の出来事ではやはりうれしい。
真綾が意気揚々とマンションのオートロックを潜り抜けようとしたそのときだ。
「真綾、やっと見つけたよ」
後ろを振り返ると、よく知るあの人が立っていた。
「お、父さん?」
「どうして、またなにも言わずに引っ越したんだ? いちいち探すこちらの身にもなれよ」
真綾の前に姿を現したのは、この数カ月音沙汰のなかった父だった。
不愉快そうに眉を顰め、こちらを睨んでいる。
また金をねだりに来たのだろうか。
真綾はそっと唇を噛み締めた。
そして、父になにか言われる前に先手を打った。