剛腕SATな旦那様は身ごもり妻を猛愛で甘やかす~利害一致婚のはずですが~
『ああ、もう!』
目的地まであと少しというタイミングで信号に引っかかり、真綾は思わず憤った。
仕方なく傘に落ちる水滴を眺めながら信号待ちをしていたそのとき。
左折しようとしたトラックが大雨でスリップしたのだ。
『え?』
荷台に積んであった建築資材が崩れ、突如として襲いかかってくる。
真綾は死を覚悟した。
『真綾っ!』
名前を呼ばれたと同時に、身体を突き飛ばされた直後、耳をつんざく轟音が鳴り響く。
『いった……』
地面に投げ出され、激しい痛みが右半身を襲った。
なにが起こったのかわけがわからず、辺りを見回した真綾の目があるものに釘付けになった。
建築資材の山の傍らには真綾のお弁当箱が転がっていた。
そういえば、母がお昼に食べなさいと弁当を作ってくれたのに、持っていくのを忘れていた。
でも、なぜこんなところに?
呆然としていると雨に混じった赤色で地面が覆い尽くされていく。
『お、か、あさん?』
歩道には見覚えのある傘が持ち主を失い、クルクルと踊り狂っていた。