隣の席の坂本くんが今日も私を笑わせてくる。

 お察しかと思いますが、生まれてこの方、人付き合いというものをまともにしたことがありません。

 人の機敏に反応のできない私は、小学生の頃から学校という人間関係を学ぶ社会縮図に全く適応できていない、所謂はぐれものでした。

 坂本くんというイレギュラーはあれど、高校生活においても、それは相も変わらず。

 だから、なのでしょうか。
 彼の行動が全く、理解できないのは。

 「おはよう、倉橋さん」

 いつもの変わらない朝の挨拶です。

 坂本くんが鞄を大きく掲げて、自らの顔を隠していなければ。ドラマとかでよくある下手な尾行をする刑事のようです。

 もはや質問をするのも面倒でした。

 私は、おはようございます、とだけ返します。
 その間も彼の顔は見えません。

 ……どうやら、また何か始まったらしいです。

< 23 / 151 >

この作品をシェア

pagetop