隣の席の坂本くんが今日も私を笑わせてくる。
一言で言いましょう。
坂本くんが、変です。
いくら人の機敏に鈍いからといっても、流石の私も察します。
どうやら、私は坂本くんに避けられているようです。
……いえ。だからと言って、どうということも無いですが。こんなことは、慣れたものです。
何せ、私は”背後霊”と呼ばれていた女ですから。
人から避けられることも、一度や二度ではありません。きっと私の行動や言動に思うところがあったのでしょう。
最初は、誰しも私に友好的に接してくれるのです。
けれど徐々に私が”つまらない人間”だと気づいて、離れていくのです。だから、彼らに罪は全くありません。気の利いたジョークが何一つ言えない私が悪いのです。
坂本くんも、そうだったということでしょう。
彼はいきなり奇行に走る困ったところがありますが、気さくで親しみやすく陽だまりの中で生きるのが似合うようなひとで、無口で愛想笑いもできない私と会話するより、優先すべきことが出来てきたに違いありません。
そもそも、席が隣同士にならなければ言葉を交わすこともなかったはずなのですから。
本来あるべき姿に戻ったというだけです。
だというのに、何故でしょう。
胸の奥に何かつかえを感じるのです。
小骨が喉に刺さったような。
……ああ。思い出しました。そうです。
キヨコです。
坂本くんがクラスメイトたちと会話している時、盗み聞きした会話の中で、坂本くん自身が言っていたではありませんか。
何故今の今まで忘れていたのでしょうか。
私は、キヨコさんにそっくりだと。
それは、つまり。