屈辱なほどに 〜憎き男に一途に愛を注がれる夜〜
阿久津さんの問いに、こくんとうなずく。


「…幼い頃から仲がよくて、ずっと信頼してた人だったんです。だから…まさかあんなことするなんて思わなくて、必死になって逃げ帰って…」


今でも、あれはわたしが昔からよく知る貴斗だったのだろうかと疑ってしまうほど。

でも、体に刻まれた痕が目に入るたび、あのときの貴斗の顔が蘇る。


「こんな痕…、早く消えてほしい」


わたしは、膝を抱えるようにしてソファの上で塞ぎ込む。

すると、かすかな物音がした。


気配を感じて顔を上げると、すぐそばには阿久津さんが。


「阿久津さん…、どうしたんですか?」

「その痕…。消すことはできないが、上書きすることならできる」

「…上書き?それって――」


とつぶやいた瞬間、唇を奪われた。

あまりにも突然の出来事にわたしは頭の中がフリーズしてしまい、次の動作に移れなかった。
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