パパに会いたいだけなのに!
5分後。

「帰りなさい」

事務所の入り口で、大きな身体の警備員さんがわたしを中に入れないようにガードする。
「君ねえ、ショーンさんはトップアイドルなんだ。君のようなファンが押しかけたって、簡単に会える人じゃないんだよ」
呆れたようにため息をつかれてしまう。
「で、でも! ショーンに差し入れが……」
そう言って、お弁当を入れた保冷のランチバッグを低めに掲げるようにしてみせたら、警備員さんは思いっきり眉を寄せて不快そうな顔をした。
「何が入っているかわからない食べ物なんて、渡せるわけがないだろう! 帰った帰った!」
追い払うみたいに、グイッと身体を押しのけられてしまった。

わたしは「ふぅ」ってため息をつく。
「簡単に会えないことくらいわかってたけど……」

……だけどあの警備員さん、ショーンが〝今日ここにはいない〟とは言わなかった。
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