パパに会いたいだけなのに!
「わたしの顔、ママに結構似てると思うんだよね」
ぽつりとつぶやく。

ショーンに会ったら、絶対すぐに気づいてくれるはず。
せっかくここまで来たんだもんあきらめたくない。
警備員さんは入り口に一人。

こんなこともあろうかと、実は変装用のキャップも持ってきてる。
ママが可愛くしてくれた髪がぐちゃぐちゃになっちゃうかもしれないのが心配だけど、仕方ない。
肩まである髪をキャップにギュッとしまいこむ。
そして、警備員さんの目を盗んでこっそりと裏口を探しに、建物の脇にある駐車場のほうから侵入する。駐車場の生垣をかき分けて建物の敷地内へ。

……もしも、ショーンに会えたらなんて言おう。
「はじめまして! あなたの娘です! ……ってちょっとあやしいかなぁ。でも顔はママに似てるから——」
なんて、ブツクサ考えてる時だった。

生垣のむこうから車のドアがスライドするような音が聞こえた直後、「「キャー!!!」」って、女の子たちの歓声のような声がきこえた。

「——おい拓斗(たくと)、帽子! 脱ぐなよ!」

「うわ、やべ! おい理澄(りずむ)、走るぞ! まともな入り口まで走ってらんねー!」
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