恋愛日和 いつの日か巡り会うその日まで
目の前のソファに座って誰かと電話をする彼の後ろ姿を見つめて思う


遠くから見てるだけでも幸せに思えた人が今、こうして私の目の前にいる。


それは今だに信じられないことだ。


学生の時よりも少しだけ低い声だけど、
線が細いキレイな手は変わらないな‥。


『立花もここで食べればいい』


「あ‥‥‥はい」


瀬木さんと一緒に食事を食べてから
後片付けをした私は、お風呂の準備を
してから一旦部屋に戻った。


「はぁ……掛け持ちバイトよりも
 疲れてる‥‥。」


バイトを掛け持ちしてた最近にしたら、この時間に家にいられることが不思議に
思えるくらいなのに、気が張っているのか疲れ方が今までと違う。


お母さんにはお金のことで甘えたくないし、出来ることは自分でやりたい。
だってわがままを言って大学に来てるんだから‥‥


大きな欠伸をすれば、疲れていた私は
ベッドの柔らかさに埋もれて簡単に意識が飛んだ




「‥‥‥ん」


梅雨時のなんともいえない湿度に目が覚める。


あ……そうか‥でそうだった‥‥


見慣れない壁紙に、ここは瀬木さんの家ということを思い出し、やっぱり夢じゃなかったんだと思わされる。


寝惚けた頭でスマホを開けばメールが数件届いていた


彩と、バイト先で仲良くなった友達からだ‥‥。みんな優しいな‥‥。
突然辞めたのに連絡をくれるなんて。
 

返信をしたあと大きな欠伸をまた一つし、着替えを持った私はお風呂場へ向かった。


まだ仕事部屋の電気が点いてる‥‥。

リビングに降りた私は仕事部屋から漏れる光の方を静かに見つめた。


アシスタントの詳しい仕事内容は分からないけど、落ち着いたら瀬木さんの本を
いつか読んでみたいな‥‥



「ふぅ……暑い」


入浴後喉が渇いた私は、冷蔵庫を開けて
買ってきておいたミネラルウォーターを取り出した


ガチャ
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