恋愛日和 いつの日か巡り会うその日まで

『飲みすぎた……』

「ふふ、和木さんに
 沢山飲まされてましたもんね。」


リビングに戻った私は、ソファに項垂れて上を向く瀬木さんの姿に笑ってしまう



『立花‥‥部屋に行こう?』


「……ツッ」


手を繋がれただけでも恥ずかしくなるのに、瀬木さんはお構いなしに頭や頬に沢山触れてくる。


もしあの時気持ちを言えてなかったら、
瀬木さんは黙って知らないフリをして
今も私を側に置いてくれてたのかな…



『これが立花に任せたいページだよ。』


寝不足と酔いで瞼が重たそうな
瀬木さんから渡されたものに
寝不足な私の脳は目が覚めた


「…わぁ……凄く綺麗!!」

『そう?それ俺が写真を撮ったんだ。』

「瀬木さんが!?」


渡されたうちの一枚は早朝なのか、光が差し込む中に映える白樺の木々。
もう一枚は夜に同じ場所で撮ったのか
白樺の木々の間から満月が映し出されたもので、どちらも本当に素敵だ。


「これをどうすればいいんですか?」

『うん。巻頭と巻末に写真を一面に
 載せるんだけど、そこに立花が
 イメージした文入れてほしい。』

「私が!!?ここに!?」


書籍の巻頭巻末ってもの凄く大切な
ところなのに、こんなの私みたいな
素人が中途半端に手を出してはいけない


『イメージの練習をしただろう?
 その感じでこの絵から伝えたいこと
 を素直に書けばいい。』

「(さっき赤ペンでダメ出しを
 あんなにつけられたのに?)」

『ちなみに今回は初めて恋愛物を
 書いたから‥‥参考までに読む?』

「いいの!?うん!読みたい!」


高城さん‥喜ぶだろうな。まさか瀬木さんが本当に恋愛物書いていたなんて‥。


『クス……分かったよ。出来上がった
 分をコピーしてあるから捲りながら
 で読みにくいけど。』

「嬉しい……ありがとう‥瀬木さん。」


渡された分厚い束を胸に抱えると、瀬木さんの温かい腕の中に閉じ込められた


『変わらないな‥‥。素直なこの 
 姿を見て惹かれたんだと思うから。』


「‥‥‥ん」

ゆっくりと綺麗な顔が近づき、優しく
触れた唇に私も静かに目を閉じた。


『はぁ‥‥‥眠い。』

「‥‥じゃあ私は部屋に行くから、
 読んだら明日…わっ!!」

『何処に行くの?』


腕の中からすり抜けた途端、
今度は後ろから抱き締められ、耳元を
掠める声に体中に電気が走るようだ


『‥ここにいて。』


ドクン


『ここで読めばいい。』


瀬木さん‥‥‥


私は恥ずかしさと緊張で何度も首を縦に
頷かせると、満足したのか瀬木さんは
デスクに座ってくれた。


仕事の邪魔になるといけないから
窓辺に座りベッドを背にもたれた。

瀬木さんの本がやっと読めるんだ‥‥。仕事のためだと思いつつも、今は
見たかった瀬木さんの世界に触れる
喜びでページを捲った。
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