恋愛日和 いつの日か巡り会うその日まで
瀬木 遥 side

せっかく日和の深くまで触れられたのに、邪魔された苛立ちを押さえつつ
インターホンの画面を覗いた


『(………あれ?……この子)』


きっと顔を赤くしてるだろう日和は
すぐに来ないと思い、玄関の扉を
チェーン越しに開けた



『‥‥なに?』


そこにいたのは帰ったと思ったはずの
黒髪の日和の友達だった。ここにいると
いう事は外に出ずにいたか、頃合いを見て尋ねてきたかどちらかだ。



『あ、あのッ‥私‥日和ちゃんにまだ
 話したいことがあって‥』


相当綺麗な子だとは思うけど、日和と同じように真っ赤な顔をして話すこの子を見ても、なんの感情も湧いて来ない


どうしてだろう……
あんなに子供みたいに我が儘言ったり、
俺を困らせて泣いたりするのに、
日和にしか欲情しない自分がいる



『それに‥ふふ‥‥やっと会えたね。』


『‥えっ?‥‥‥‥‥‥‥ツッ!!』


ああ……そうか‥‥。日和は俺にとっての恋愛の原点そのものだからだ。


珈琲を飲みすぎとか、頭拭いてとか、
寝てくださいとか無意識にいつも俺を心配してくれる。

そんな下心のない彼女だから、強引にでも早く心を開かせたくなるし、甘えて
欲しいとさえ思える。


『日和が起きてる時においで?彼女、
 今俺のベッドで眠ってるから。』

『‥‥えっ?』


ほらね…やっぱり思った通りだ。
下心がある上に、嘘だが日和の体調のことを心配もせず自分のことばかりだ。


わざと立花ではなく日和と名前で呼んだのは相手に対する最大の警告だ。

俺の記憶が間違ってなければだが、
苦い思い出に久々に溜息が出る。


日和に何もしないといいけど…



瀬木 side 終
< 98 / 146 >

この作品をシェア

pagetop