婚約破棄したいのに、天才華道家の独占愛に火を付けてしまったようです。
流石の紅真でさえ溜息をつくしかなかった。
とにかく紫陽も蘭もノリノリで、その後も色んなドレスを引っ張り出す。
「ミニ丈もかわい~。これも着てみたら?」
「ドレスの試着って結構疲れるんだけど……」
「あら、そうなの〜?」
相変わらず紫陽はマイペースだった。
千寿兄妹が少し離れたところで話しているので、菜花は紫陽に聞いてみた。
「お姉ちゃんは、いいの?」
「何が〜?」
「その、お姉ちゃんも紅真くんのこと……」
歯切れ悪くモゴモゴしていると、紫陽は菜花の顔を見て真顔で答えた。
「やぁねぇ、妹の好きな人取ったりしないわよ〜」
「えっ!?」
「私が気づいてないと思ってたの〜?」
「お姉ちゃん……」
「ずーっと好きだったものね。私はそんなに長く一人の人を好きになったことないから、菜花が羨ましいわぁ」
そう言って紫陽は微笑むと、菜花だけにコソッと耳打ちした。
「紅真さんも菜花にベタ惚れだものね?」
「っ!」
耳まで真っ赤になってしまう菜花に、紫陽は「かわい〜」ときゃっきゃっとはしゃぐ。
どうやら姉は全てお見通しだったようだ。色んな意味で敵わないなと思った。
「ありがとう、お姉ちゃん」
紫陽はとびきり甘い笑顔で微笑み返した。