不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました
 翌朝、目覚めた私はぼんやり見慣れない部屋を見回し、ここは黒瀬さんの部屋だと思い出す。
 本人はいなくて、私はひとりベッドに寝ていた。
 窓から明るい日差しが差し込み、日が高くなっているのがわかる。
 時計に目を遣ると、十時過ぎだ。

「もうこんな時間!」
 
 慌てて起き上がった私は、また黒瀬さんのTシャツを着せられていた。しかも、まだ身体中に彼の感触が残っている。
 思い出すだけで身体が熱くなる。

(私たちってどういう関係?)
 
 でも、好きだって言ってくれたと考えて、頬がゆるんでしまう。

(違うわ、『好きな子』と言われただけよ)

 それもどんな温度感なのかわからない。
 弄ばれているだけかもしれない。
 敢えて悪い想像をして落ち着こうとしたけれど、浮かれてしまっている自分がいた。

 黒瀬さんが置いてくれた服を見つけ、着替える。
 リビングに顔を出すと、黒瀬さんがソファーで本を読んでいた。
 スーッと通った鼻筋が美しい横顔で、思わず見とれてしまう。
 私の視線に気づいたのか、彼が振り返って微笑んだ。
< 27 / 40 >

この作品をシェア

pagetop