【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
(初めては素敵な人と……かぁ……)

 もしも自分が寵姫(ちょうき)の件を受け入れたら、そういうこと(・・・・・・)もするのだろうか? と思いついてしまい、さらに頬を赤らめる。

 そんな二人を見ていた旅芸人の人たちは「なんだありゃ」と呆れたように肩をすくめていた。

 食事を終えて各々(おのおの)がテントに入る。

 アナベルも自身のテントに向かい、簡易ベッドに座ると、まだ早鐘を打っている胸の鼓動にゆっくりと深呼吸を繰り返した。

 ぽすっとベッドに寝転んで目を閉じる。

 それでも、頬に集まる熱はそのままだった。

(恋? これが恋なの……?)

 初めての感情に悩んでいると、あっという間に真っ暗になった。この時期からは日が暮れるのが早い。

 アナベルは慌てて着替えとバスタオルを手にして、テントから出る。

 近くに川があったことは確認済みだ。

 真っ暗になった森の中を、慎重に歩いていく。

 新月のようで、空を見上げても星々が輝いているだけだ。

 川にたどりつき、周りを見渡してから服を脱ぎ、そっと川の中に手を入れてみる。

 冷たくて身体がぶるりと震えたので、魔法を使って一部だけをお湯にした。

 ちゃぷりとお湯の中に入り、ふぅ、と息を吐く。

 おそらく、他の女性たちはもう川で身体を清めただろうと考えて、アナベルは自分がこの感情に振り回されていることを自覚した。
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