【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
 ティオールに到着するまであと少し。

 少し早めに休むことになり、みんなテントを設営しようとしたり、食事の準備を始めようとしたりしていたが、ふとエルヴィスがなにかに気付いたように顔を上げた。

 それと同時に、彼の護衛である騎士たちが剣を抜く。

「皆、下がっていろ」

 エルヴィスの真剣な表情に、アナベルたちは身を寄り添うように集まった。

(――いったい、なにが起きるの?)

 不安そうに周囲を見るアナベルに、アドリーヌがぽんぽんと彼女を落ち着かせるように背中を叩く。

 アドリーヌの表情も強張(こわば)っていたが、アナベルはきゅっと唇を結んで心配そうにエルヴィスを見た。

「――まさか、王都に近い場所で魔物に()うとは……」

 彼の言葉通り、どこから現れたのかわからない異形のものが姿を見せる。

 ドクン、ドクン、と鼓動が嫌な音を立てた。

 ――魔物を見て思い出すのは、十五年前のあのときだ。冷や汗が(にじ)んでくるのを自覚して、アナベルは身体を震わせる。

 魔物がエルヴィスたちに襲いかかってきた。

 黒いもやのように囲まれて、どのような魔物なのかは目視できない。

 しかし、エルヴィスも、彼の護衛たちもバッサリと魔物を斬り倒していく。

 彼は片手で剣を振るう。剣は冷気を帯びているようで、魔物を斬るたびに凍らせている。よく見れば、魔物を凍らせたあとになにかを壊すかのように狙いを定めていた。
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