堅物弁護士が占い好きな私に恋を教えてくれました
 なにげない小さなことまで全部記憶に残っていて、思い出すだけで胸がときめくのは、あなたを心から愛しているから。
 そう伝えたいのに、言葉の代わりに涙がぽろぽろとあふれてきて言えなくなってしまった。

「占いに左右されるのはもう辞めます。私、頭がよくて思いやりもあって、人として器の大きい先生が大好きで……」
「もういい。わかった。だから泣かないでくれよ」

 彼が立ち上がり、私のそばまで来て申し訳なさそうに頬の涙を指で拭う。

「静珂、俺と付き合ってほしい」

 夢なら醒めないでほしい。私はあふれ出る涙を止められないままコクリとうなずいた。
 彼の大きな手で頭をなでられると、愛しさが満ちて全身の力が抜けそうになる。

「……よろしくお願いします」
「参ったな。どうしたら静珂は泣き止んでくれる?」
「今はうれし涙なので、むずかしいです」
「じゃあ、これならどう?」

 おもむろに彼が腰をかがめ、椅子に座ったままの私の唇にキスを落とした。
 驚いたせいなのか、不思議なことに涙が止まった気がする。

「先生……」
「会社以外で会うときは“先生”は禁止。恋人同士なのに変だろう」
「……はい。亜蘭さん」

 彼はうれしそうに微笑み、再び私の唇を奪った。触れるだけのキスがどんどん深いものへ変わっていく。
 椅子から立ち上がると同時に軽々と横抱きにされ、彼が寝室の扉を開けた。
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