性悪陰陽師は今日も平気で嘘を吐く。
 人生初のナンパ事件?から数時間後、光と類はゲームセンター前にあるコーヒーショップを訪れていた。

 「流石に、疲れたな…」

 光は学生服に似合わないコーヒーカップを片手に類の隣の席へと座り込む。

 生憎、テーブル席は全て満席で渋々カウンター席に座ったはいいが、先程から女性客の視線が痛い。

 全く反応を示さない類の様子に光は心配そうに顔を覗き込む。

 「おーい、大丈夫か?」

 「うわぁ!だ、大丈夫です!」

 「そう。ならいいんだけど…」

 光はそういうとコーヒーカップに口をつける。

 「また、コーヒーだけですか?」

 類は不思議そうに光を見つめる。

 「なんかあった時の為だよ。食べると動きが鈍る」

 「そうなんですか…?」

 「お前も、食事した後は無性に眠くなったり、横になりたくなったりすんだろ?それと同じ。だから、出来るだけ外では食べないようにしてる」

 「デートなのに?」

 「デートだからだよ。こう見えて滅茶苦茶気は張ってんだ。わかれよ」

 光はそういうと、困ったように眉根を下げる。

 「なんか、すみません…。私ばっかりはしゃいでしまって…」

 今思えば、確かに光はデート中何かを警戒しているようにも見えた。それはきっと人ではなく。人混みに紛れ込む人ならざる何かなのかもしれない。

 「楽しいなら良かった。ゲーセン行った時はあんま楽しんでるように見えなかったから…」
 
 光は窓の外を見つめながら呟く。

 「た、楽しいですよ!。さ、最初は楽しみ方を知らなかっただけで、とっても楽しかったです!光さんと格ゲーも出来ましたし、ボールゲームも出来ましたし、それに、リズムゲームとか、クイズゲームとか、このお店のフラペチーノだって、とっても美味しくて嬉しいです!」

 全力で喜びを伝える類に光は苦笑する。

 「美味しくて嬉しいってどういうことだよ…、ボールゲームに関しちゃ想定外だったけどな」

 「で、でも!想定外も思い出の一つですよね?」

 「まぁな、俺も久々に楽しかった。ありがとな」

 素直に紡がれた光の言葉に類は照れ臭くなる。お礼なんて言われたのはいつぶりだろうか?

 「お礼を言うのは私の方です…」

 「俺は何もしてねぇよ」

 「そんなことありません!沢山してもらってばかりです…その…、私…」

 何故か恥ずかしそうに口籠る類に光は苦笑する。

 「なんだよ」

 「私…、その…」

 「ん?」





 「私…、やっぱり囮の仕事続けます」




 類の言葉に光は、目を見開く。

 「私、光さんがちゃんと、お父さんと面会出来るまで、囮の仕事続けます。もちろん、お父さんと面会した後も続けられるだけ続けたいです。私、対してなんの役にも立たないかもしれませんけど…、でも、光さんとなら一緒に乗り越えられそうな気がします…」

 類は光の目をまっすぐに見つめる。

 「だから、どうか、これからも一緒に居させて下さい。私
頑張りますから…」

 側から見ればプロポーズの様なその言葉に、光は思わず顔を背ける。

 「まぁ、お前がそう言うならそれでいいよ…」

 「その代わり、頑張ったらまた連れてきて下さい!」

 「ゲーセンに…?」

 「デートです!」

 光は、どこか困った様に微笑むと、類に小指を差し出す。

 「じゃあ、指切りでもしとくか?」

 「はい!」

 類は差し出された小指に自身の指を絡ませる。

 「指切りげんまんの歌知ってる?」

 「もちろん!知ってますよ!」

 「せっかくだからさ、嘘ついたら針千本じゃなくて違うのにしようよ」

 「いいですよ?何にします?」

 類の言葉に光は少し黙り込む。

 「じゃあ、嘘ついたら、本当の家族になるってのは?」

 「本当の家族…?」

 類は少し戸惑いの表情を見せる。

 「妻とか嫁とか、そんな小さな縛りじゃなくてさ。文字通り本当の家族。一生涯のパートナー…」

 光は真剣な眼差しで類を見つめる。

 「それって、罰なんですか?」

 「罰だろ…。俺みたいな性格悪い奴と生涯パートナーなんて」

 光のどこか自嘲するような台詞に類は苦笑する。この男はどこまでも自分に自信がないらしい。

 「…いいですよ?」

 「…本当に?」

 「嘘です」

 「…」

 わかりやすく、表情を輝かせたり曇らせたりする光の姿に類は吹き出す。

 「んだよ…」

 「だって、光さん可愛んだもん」

 「お前な…」

 光はどこか恥ずかしそうに、視線を逸らす。

 「嫌なら、別にー」

 「嫌なんて言ってません」

 「どっちだよ…」

 光の質問に類は絡ませた小指に力を入れる。

 「いいですよ、貴方となら」

 「…後で嫌だとか無しな」

 「えぇ、もちろん」

 「じゃあ、せーので指切りね」



 「「せーの」」



 【指切りげんまん。
  嘘ついたら、
  本当の家族になーる。
  指切った。】


 
< 103 / 131 >

この作品をシェア

pagetop