性悪陰陽師は今日も平気で嘘を吐く。
  翌日ー。
 
 「え?、旅行…ですか?」

 キョトンとした類の表情に光は優しく微笑む。

 「うん。喫茶店の経営も落ち着いてきたし、たまにはお前と旅行もいいなと思って」

 もちろん、嘘である。

 「お兄ちゃん…、と二人で?」

 「そ。俺と二人で」

 少々戸惑い気味に尋ねる類に光は苦笑する。

 世間一般の兄弟はきっとこんなことしないのかもしれない。

 でも、これには光の明確な理由があった。

 「思い出作りだよ」

 「思い出作り?」

 「うん。思い出作り。俺とお前の最後の小旅行」

 「最後って…」

 相変わらず戸惑い気味に尋ねる類はどこか不安そうにも見える。

 「あれ?俺言ってなかったけ?」

 光はそんな類の反応を他所に、わざとらしく視線を逸らす。

 「…何も聞いてませんけど」

 類からしてみれば喫茶店の経営も初耳の事である。

 「お前は、この旅行が終わったら結婚するんだよ」

 「え?」

 突然の事実に類は目を丸くする。

 「結婚って…、誰と…」

 「ん?、見合い相手」

 「…お見合い?」

 突然の言葉に類は驚く。

 「うん。優しくて、大らかで、真面目な人。顔もまぁいい方だと思うよ?」

 光は、動揺を悟られないように口元に笑みを浮かべる。

 「でも…、私その人のこと何も…」

 「知る必要なんてないさ。お前はきっとそいつのことを好きになる。なんせ俺とは正反対の人を…」


 選んだからね。
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