性悪陰陽師は今日も平気で嘘を吐く。
 二人の間に暫しの沈黙が流れる。

 いつだって、人間は守れない約束をしてしまう。

 それでも、約束をしてしまうのは、

 きっと、一人ぼっちが寂しいからかもしれない。

 「信じて」なんて陳腐な言葉、信じる馬鹿は居ないと分かっていながら

 僕らはその人の言葉を信じてみたくなる。

 信じてあげたいと思いたくなる。

 どうやら、それが人間という生き物らしい。


 「…信じます」

 「…」

 「…私、光さんを信じます」

 類はそう言って優しく微笑む。

 「…何か、改めて言われると気恥ずかしいな」

 光は意外にも視線を逸らす。しかし、その言葉には小さな喜びが含まれていた。

 「…でも、一つだけお願いがあります」

 「お願い?…、まぁこの際だ。いいよ、何でも言って」

 光は意外な言葉に、首を傾げるも愛しい恋人の発言に耳を傾ける。

 「もう、、」

 「…?」

 「もう、、復讐は辞めにしませんか?」

 「はぁ?」

 まさかの願いに、光の表情が険しくなる。

 「ですから、もう復讐はー」

 「お前に、それを決める権利はねぇ…」

 光は一段と、低い声で反論する。

 「確かに権利はありません。だから、お願いしてるんです…」

 しかし、類も負けじと反論する。

 「自分が何喋ってるかわかってんの?、お願いでどうにかなる問題じゃねぇんだ。親父との決着はつけなきゃなんない。あいつは、俺のお袋と俺の兄弟と、あんたの両親を呪い殺したんだ、そんな奴を放っておけってか?」

 光は怒りを露わにしながら、容赦なく言葉のナイフを突き刺す。

 「光さんが怒るのはわかります。私もムカつきます。でも、その決着は私達でつけるものでは無い様な気がするんです。貴方のお父さんはもっと然るべき大きな存在によって、いずれ裁かれます」

 「何だよそれ…、スピリチュアルか何か?悪いけど俺はそういうの信用してない…」

 「違います。人を恨んで復讐したとしても、私達は絶対救われません、復讐して、やり返して、ざまーみろって言って、それで、貴方の家族は帰ってきますか?、私の両親は帰ってきますか?、帰ってこないでしょう!、帰ってこないのに、そんな事に労力を使って、疲れて、しんどくなって、貴方が悲しむのは、もう避けたいんです!」

 類の叫びに、光の肩が震える。

 「光さんが、仰ってくれたんじゃ無いんですか?、どうせ死ぬなら、もっと楽しいことやって、それからでも遅く無いって、だったら、そうしましょうよ…もう、恨みや妬みの世界で生きるのは辞めましょうよ…もう、怒りと闘うのは辞めましょうよ…!」

 記憶は消されてしまったはずなのに、

 何故か覚えている言葉達、

 それは他でも無い言霊の力なのかもしれない。


 「光さんが、復讐、、辞めてくれるなら、私は生涯貴方を信じます、、、」

 「辞めないなら?」

 「…多分、私は貴方のお父さんに消されます」

 「…」

 光はその言葉に顔を覆う。

 父の狙いはこれだった。

 もっと早くに気づいていれば、

 もっと早くに何とかしていれば、

 あの日、

 類に声をかけなければー。

 あの日、

 類と一緒に人生をリタイアしていればー。

 
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